不忍池と路面電車

今日、上野恩賜公園は、 博物館群、動物園、図書館、東京藝術大学などの教育文化施設が立ち並ぶ文化的地域として知られる。その上野公園のなかで、面積ではおよそ五分の一を占めながら、あまり注目されることのない場所が不忍池である。

不忍池は上野公園の南端に位置し、北に上野動物園、東に京成上野駅、南西に不忍通りと接する。上野の山とも呼ばれる公園を中心に江戸時代より桜の名所として知られ、春には池の周囲も花見客で賑わうが、普段は駅前や上野広小路の近くにありながら喧噪から離れた憩いの場となっている。

池の中央には弁財天を祀る弁天島があり、堤によって三つの池―蓮が群生する蓮池、貸しボート場のあるボート池、上野動物園西園の一部として川鵜が繁殖している鵜の池―に分割されている。現在は北側の鵜の池が上野動物園の敷地となっているため不忍池の周回はできないが、かつては池畔に沿って都電の専用軌道が敷かれ、「動物園前」と「上野公園」のふたつの停留所を配していた。

O-1_img_1  図1 1930年当時の不忍池,内山善三郎著『東京市各區別地圖:下谷區全圖』内山模型製圖社(1930年)より抜粋

根津方面から上野公園前へ出るまでの、不忍池の北畔から東畔をまわる車窓からの景色は「春は名どころ上野のさくらを、夏には蓮の花咲く池面を、冬は冬で水鳥遊ぶ不忍池を眺めながらの都電の小旅行」として乗客に親しまれていたという。

不忍池畔を走る都電が廃止されてから既に40年以上が経ち、かつてこの場所が上野の玄関口として機能していたことは忘れられつつある。「上野公園」停留所があったあたりには、現在下町風俗資料館が建ち、江戸時代から昭和中期にかけての東京の下町風俗に関する資料を観ることができる。

O-1_img_2 図2 現在の不忍池の様子

作成者  | 2014-03-31 (月)
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