上野の山 寛永寺 消滅した坂

寛永寺寺院は徳川期において上野の山の大部分を占める重要な宗教施設だった。寺院は徳川幕府にとって重要な役割を果たし、戊辰戦争の上野の戦いでは甚大な被害を受けた。明治維新後、山の大部分が再利用され、現在の博物館群が建てられた。今日では寛永寺は上野の山の総面積のほんの一部を占めているにすぎないが、そこにはある種の空間的な連続性と観察可能な変化がみられる。

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図1:江都東叡山寛永寺地図
出典:国立公文書館デジタルアーカイブ、キーワード“江都東叡山寛永寺地図”(取得日 2014年6月4日)

この地図、江都東叡山寛永寺地図は1755年に出版され、国立公文書館が保有する森洪庵(1748 – 1763)によって制作された地図の大規模コレクションの一部である。地図の左下側に沿って弁天島と不忍池があるが、当時は一本の陸橋によって接続されていただけであった。この地図について注目すべきことは、公園(と動物園)を形成する概形の大部分がまさにこの地図の主要な道を反映していることである。例えば、近接した(弁天堂近くの神社)ふたつの道が示されているが、今日、ひとつは神社へとつながる歩道であり、もうひとつは車両用に舗装された道路となっている。いくつかの場所では、道路が追加されて、元の地図が上野の山を通るすべての道と歩道を示していたかどうかは疑わしい。

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図2:江都東叡山寛永寺地図より弁天堂の詳細
出典:国立公文書館デジタルアーカイブ、江都東叡山寛永寺地図”(取得日 2014年6月4日)

1748年に出版された「分間延享江戸大絵図」(注1)参照1748年を参照すると、私たちは上野の山が周辺地域とどのように接続していたか感じ取ることができる。この地図では、北は右側にあるが、寛永寺の北のエリアは空き地として描かれ、“田畑”と呼ばれた。

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図3:「分間延享江戸大絵図 全」より上野の山の詳細
出典:Japanese Historical Maps:東アジア図書館 カリフォルニア大学バークレー校(取得日 2014年6月4日)

江都東叡山寛永寺地図のひとつの興味深い点は、それが上野の山から下谷への下り坂を示していることである。地図に示されていない坂も示されている坂と同じようにまた興味深い。上野の山の東側には、信濃坂、屏風坂、および東坂という名前の三つの坂が示されている。これらだけが、この地図上で名前のつけられた坂であり、山の西側にも急な上りの階段があるが、それらには名前がつけられていない。

道路と道が保持されるという都市の特徴を踏まえれば、これらの坂道は鉄道線路の開発にあたってどのように整理されたのだろうか?不忍坂は慈眼堂の後ろにあり、「下谷へ下り抜ける小さな坂道」であった。他の資料ではそれは慈眼堂と霊廟の間にあったという。ブログ「東京坂道さんぽ」によると、不忍坂は失われ両大師橋に取って代わられた。

ここで、上野の山に関して、その周囲にどのように鉄道路線が開発され、路線の開発がアクセスルートをどのように変化させたかという疑問が浮かぶ。今日、下谷地区から上野公園へ歩くには、歩行者は山の東側と北側をつなぐ線路に架かる橋を見つけなければならない。例えば、鶯谷方向から上野の山に行くにはJR線上に架かる大きな陸橋がある。このため、この地域の都市空間が江戸でどのように「感じられた」かを想像することは難しい。 【There, any path that night have existed is lost under the development of the over pass.】山手線で上野から鴬谷まで乗って、注意深く山側に上がるための古い坂道や道すじの形跡を見たところ、このGoogleマップで視認できるひとつのことを見つけた。JRの区画周辺のフェンスのなかにあって一般には立ち入りできないが、そこにははっきりと階段があるのだ。

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図4:階段の詳細
出典: Google Maps(取得日 2014年6月4日)

おそらくこれは都市景観のなかに残された痕跡か、もしくは不忍坂の一部として残ったものかもしれない。それはなんとも言えない。私たちが言えることは、坂道がなくなってもそれでもなお、現在の陸橋と歩道橋は元の坂道からできた通り道に続いているように見えるということである。そうであれば、歩行者は現在、坂道を上るよりも橋を渡るために階段を上るけれども、いくつかの点で私たちは歩行者における連続性を江戸時代から流れに見ることができる。いまや、その空間は上野駅に占められ、線路は通り抜けの障壁となる境界を作り、歩いて横断することは容易でない。リンチが著作『都市のイメージ』のなかで指摘したように、鉄道路線のような障壁は私たちの心的な地図において堅牢な境界となりうるのだ。
(Susan Taylor)

作成者  | 2014-09-30 (火)
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